2014年3月10日

雪の朝に思うこと



 
 三月、そろそろ春分を迎えるというのに、白を装ったとなり近所を散歩することが
できた。雪の風景は個人的には好ましいもののひとつだ。冷たい気に包まれていると
生まれる出る前の物静かな息吹きを感じる。今年は珍しくどこか新しい気持ちになっ
ている。意欲というほどのものなどもはや持ち合わせてはいないけれど、長年携わっ
てきた写真との、これまでなかった関係を持てるような気がしている。慣れ親しんだ
デジタルはめっきりその機会が減ったカメラマン稼業の道具として、あるいは日記の
ような日々のメモ代わりとして使いつづけるつもりだが、時間をかけて向き合いたい
ものには相応しくない。流れて忘れ去るものなどには興味が薄れるばかりの、この姑
息な現代の日常の中にも留めておきたい相手がいる。そして確かに出会っている。元
の鞘に戻ろう。そうでしか遺せない存在がある。