2013年10月12日

鴻の里 #007 実り




 そばにいて伝わるのは、去年にも増して実りを感じている豊彦さんの身体からあふれ
出す歓びだ。にこやかな笑顔、軽快な動きがそれを物語っている。鴻の里は自然農を目
指している。だがその道はまだ始まったばかり。休耕田だった田んぼを今年は十枚手が
けた。そのひとつひとつが様々な表情を見せて段々に連なっている。ごく普通にとても
田んぼらしいものから、半分以上も占めている草に埋もれて稲穂が顔を出す、刈った後
がまるで荒れ地のような田んぼもある。そのどれもが無農薬で無肥料で耕さないという
共通項を持っている。本などで学んだ知識を大事にする章子さんと、体験重視の豊彦さ
んと、絶妙なコンビかも知れない。なるべく互いに不満を残さないようにしているのか
折にふれて意見をぶつけ合う姿も見られる。それにしても広い棚田にぽつんといる人の
姿には、なんとも言えない魅力がある。爽やかな風のようだ、苦悩も何も脱ぎ捨てた。











0 件のコメント: